2011年

11月

15日

手づくりで郷土の良さを伝えていく-三和町『柏の里』-

柏の里

 

三和町の山間地域、車一台がやっと通れる程の細い道を進んだ先に、

柏餅の加工場・『柏の里』があります。

 

長年この地で酪農を営んできた永山雄一さん・シゲヨさんご夫婦が、

酪農から転身し、本格的に柏餅の加工・販売をはじめたのが、2002年。

この加工場は、器用な雄一さんが廃材を利用し“手づくり”で建てたそうです。

毎朝ここで柏餅をつくり、季節の野菜とともに近くの直売所で販売しています。

 

柏餅は、もともと五月の節句の食べ物として知られていますが、

この地域では田植え後の「さなぶり(※)」の際に神棚に供えたり、

お嫁さんが実家へ里帰りする際に姑さんが作って持たせる風習があるといいます。

 

永山さんご夫婦は、郷土に根付いた味わいの1つで、「めでたいとき、嬉しいときに食べるもの」と

柏餅を作ろうと決めたそうです。

 

 

※さなぶり・・・田植え後、田の神様を送る行事。神前に早苗と御神酒を供えて田植えが無事終了したことを感謝し,豊作を祈願する。

 

柏餅
自慢の柏餅。5個入り1パック525円(税込)。
国道49号線沿いの直売所
国道49号線沿いの直売所

 

キャッチフレーズは“ホタル飛ぶ田んぼの柏餅”。

 

材料のもち米とうるち米は、夏になるとホタルが飛び交う永山さんちの田んぼで収穫したもの。

うるち米6:もち米4の割合で粉にし、水を加えて練り上げます。

小分けにし、平らにした生地にこしあんを乗せ、柏の葉を下にしいて半分に折り、

蒸しあげれば出来上がり。


あんこを包んでから蒸すという昔ながらの製法で、手作りと無添加にこだわり、

お客からは「素朴で懐かしい味がする」と評判だそうです。

 

私も一ついただきましたが、毎朝手作りしているだけあって、出来立てのやわらかさでモチモチです。

こしあんは甘さ控えめで、お茶請けにぴったりでした。

 

ご自宅近くの国道49号線沿いに建てた小さな直売所で、販売をはじめたところ、

少しずつ認知が広がり、 五月の節句とゴールデンウィークが重なる時期には、

最高で一日500パックを売り切るほどの人気商品に成長したといいます。

 

永山シゲヨさん
今回お話を伺った永山シゲヨさん
おもてなしセット
シゲヨさん特製のおもてなしセット。美味しいお茶に季節のお漬物と、柏餅。

 

2007年には、加工場の隣に、石窯でピザ作りを体験できる農家レストランをオープン。

建物から石窯まで、こちらも雄一さんの“手づくり”です。

 

畑の野菜、お米、柏餅、そして建物まで、何もかも自分たちで“手づくり”してしまう、お二人。

いつも笑顔で明るく、仲の良いおしどり夫婦ですが、

10年ほど前まで営んでいた酪農では、苦労の連続でした。

 

乳価の下落や生産調整など、常に農業政策に左右され、さらに追い討ちをかけたBSE感染牛の発生。

純粋に農業を楽しめる状況ではなかったそうです。

 

酪農を辞め、柏餅の製造・販売と農産物の直売所を始めてからは、

農業の楽しさや自分たちの暮らす風土の趣を感じられるようになったといいます。

郷土の食に思いを深め、街の人に自然をのんびりと感じてもらったり、

四季折々の野菜を味わってもらいたいと思い、この農家レストランの開店を決めました。

 

レストランは予約制で、ピザ焼きや農産物収穫などの体験イベントも企画。

目の前の畑から採ってきたばかりの新鮮な野菜を使い、ピザソースは自家栽培のトマトから作ります。

特別な宣伝はしていなかったものの、市内外から、家族連れや女性グループ、

ピザの石窯や農業に興味を持つ方など、多くの方がいらしてくださいました。

 

店内には感想やメッセージを綴るノートがあり、オープンから震災後の現在に至るまで、

ここを訪れた方の書き込みがたくさん記されていました。

 

そこには、東京・広尾にある高級料亭『分とく山』の総料理長・野崎洋光さんの書き込みも。

野崎さんは古殿町出身で、三和町の商工会主催の講演会で知り合って以降、親交があるといいます。

三和町にも何度かいらしてくださったそうで、永山さんご夫妻の人柄と愛情こもった手づくりの味、

そして、柏の里の居心地のよさが、 たくさんの人の心を惹きつけている証拠だと思いました。

 

 

メニュー
自家製ソースでピザの手づくり体験。野菜料理・コーヒー・デザート付。
石窯
雄一さんお手製の石窯
愛の手形
手づくりの農家レストランの壁には、ご夫婦の手形が。

 

お二人は、食を通じて、作り手と食べ手が心を通わせることができることを、日々実感しているといいます。

 

奥様のシゲヨさんは、この地に伝わる食文化や風習を、若い世代にも伝えていくことを目標とし、

直売組織『ひまわりの実』や、『郷土食をつくる会』を結成したり、生活研究グループの代表もつとめるなど、

精力的に活躍の場を広げていらっしゃいます。

最近では、古い民話を子供たちに知ってもらうため、「語り部」の勉強もしているとか。

 

今後のお二人の夢は、以前使用していた牛舎を再活用し、農村を体験できる宿泊施設にすること。

その際はギャラリースペースも設け、手押し車など、希少性の高い昔の農器具を展示し、

温故知新の精神を現代の人たちに伝えて行きたいといいます。

 

「接客したり、話をしたりするのも楽しいですが、作ることがもっと好き」と語るシゲヨさん。

柏の里から、郷土の食への思い、四季折々の自然の豊かさ、手づくりの楽しさを伝えるため、

今日も夫婦二人三脚の挑戦はつづきます。

 

(つる)

 

柏の里フォト
柏の里マップ